今週一週間の間、大きなニュースとして報じられているのが、オクラホマ大学での人種差別事件とファーガソンの警官銃撃です。探し方が悪いのかも知れませんが、オクラホマ大学のほうは日本語版のCNN.co.jpでは見つかりません。日本語版は、朝日新聞系列が運営しているようですので、翻訳される記事は選ばれたものなのでしょう。ただ、翻訳内容は時々、もう少し日本語っぽくして欲しいと思うくらい原文に忠実だと思います。

オクラホマ大学の事件

人種差別発言

先週、2015年3月7日土曜日に、オクラホマ州の州立大学、オクラホマ大学で大学の創立記念日があり、その際に男子寮(ΣΑΕ、シグマアルファイプシロン)の学生たち(ビデオが見られないのでどの程度が分かりません)が、「黒人はΣΑΕには入れない。木に吊るしてやるが、」(この後が意味が分かりませんが、一緒に話したりはしない、という意味か、一緒に作業しないという意味か、いい意味ではないです)というようなことをバスの中で歌ったという動画がネットに流れたようです。

A Saturday video showing party-bound fraternity members on a bus chanting a racial epithet found its way anonymously to the school newspaper and a campus organization, which both promptly publicized the nine-second clip.
The students on the bus clap and pump their fists as they boisterously chant, "There will never be a ni**** SAE. You can hang him from a tree, but he can never sign with me."


出典:『'Disgraceful' University of Oklahoma fraternity shuttered after racist chant』(CNN)
注:ni****は黒人を意味する差別用語です

ni****は、差別用語で発言すると社会的制裁を受けます。

50年前の1964年に公民権法が成立して以来、アメリカでは、職場や学校といった公の場で人種差別行為――人種、皮膚の色、出身国などを理由に差別したり、排斥したりすること――を行うと罰せられる。
が、同法があるからといって、人種間の偏見が完全になくなったわけではない。生活環境の現場ではどっこい差別は生き続けている。
それが証拠に、米国では「ヘイトクライム」(人種、宗教などを理由に特定の人種や団体を脅したり、襲撃したりする犯罪)があとを絶たない。ヘイトクライムを肯定する過激派団体は全米に939もある。("Hate and Extremism," Southern Poverty Law Center)
仲間内で人種的偏見を言い合っているうちはいい。だが、そうした「私語」がひとたびソーシャル・メディアなどに掲載され、白日の下に曝されると、これは「失言」では済まされなくなる。口走った人間の社会的地位が高かったり、影響力があったりすればするほど、それがもたらす負のインパクトは大きくなる。
出典:『NBAクリッパーズのオーナーは例外的存在かアメリカの人種問題がさらに悪化したわけ』(日経ビジネス)2014/5/15

今回の事件は、まさに「失言」では済まなくなった例なのですが、ちょっとした失言ではなくて、歌って周りを巻き込んで合唱したのではと思われます。(ほかの記事では、二人の学生が主導したとして挙げられています)→動画が出ていました。別の記事『オクラホマの合唱事件、』に書いています。

日本人も、アメリカでこれ、にがーを発言すると危険です。テレビで黒人の高齢者が黒人差別を振り返っている動画では、そのまま放送されていた気がしますが、タブーです。これと近い用語では、ニューヨークに居た松坂投手の三振ショーに公式ツイッターが「だいすけけけー」とツイートして大騒ぎになった事件が記憶に新しいと思いますが、悪意があるかどうかにかかわらず、そういうように聞こえたらアウトと思われます。(松坂投手は、もともと「だいすけー:Dice-K」と呼ばれていました。Kは日本でも使っている、三振、ノックアウトの頭文字「K」です。)

その後の経過

で、その発言がネットに流れたあと、どうなったかというと、翌日には連邦法に基づいてその男子生徒が入っていた寮が一時閉鎖されました。大学ではデモが起こって、学長が男子寮を閉鎖、かかわった学生は永久追放になりそうだということになりました。追放処分になりましたが、学長が自分が学長の間は、と発言しています。

日本では考えられない早くて強い反応ですが、それだけ差別がひどいのでしょう。学生がインタビューに答えていて、「そういう発言があっても驚かない」と言っていました。

夜中に学長が拡声器で演説しています。(ツイッターを貼り付けていますので、ツイッターの規約変更(同意がない撮影は投稿禁止になりました)などで削除された場合閲覧不可になります。)

人が集まっているので、土曜日の創立記念日で集まっているのか、デモで集まっていたのか分かりませんが、ツイートされたのは月曜日朝です。この後も、学長がこれでは終わらせない、許さないというような趣旨の発言をしています。

ファーガソンでの反応

このバスのビデオがミズーリ州ファーガソンの学生組織にもわたり、先の学生の発言に近いようなことを言っています。

Unheard, a campus organization launched in response to the police shooting of Michael Brown in Ferguson, Missouri, received the video Sunday via anonymous text and immediately moved to "let our community and our university know that this behavior is not tolerated, that's it's unacceptable and it's extremely, extremely offensive," said the group's co-director, Chelsea Davis.
This mentality is not new to campus, and it's not confined to one fraternity, Davis told CNN, but it's the first time people have been caught on video.
"Unfortunately, it took them getting caught on video camera for this to happen, but this is definitely not something that is brand-new. It's not something that's only seen within this one organization," she said.


出典:同CNN記事

これが、警官銃撃に影響したのかは分かりません。

 

ファーガソン郡の事件

ファーガソン(ミズーリ州セントルイス郊外)の黒人少年射殺事件

この事件について、アメリカ生活・e-ニュースさんに解説してありました。

日本のニュースでニューヨークの映像が流れたかは分かりませんが、今でも上のリンクの動画を見ることが出来ます。ABCニュースの公式Youtubeからの動画です。

The PAGEに論説記事『米警官による黒人暴行事件 「息ができない」アメリカの人種と犯罪の現在 上智大学教授・前嶋和弘』も出ています。

警察の人種差別を認定、白人警官は訴追せず

先週、ファーガソンの警察が日常的に黒人差別的だったという報告が最終的に連邦司法省から出されましたが、同時にブラウン少年を射殺した白人警官が不起訴になりました。

司法省は調査の結果、ブラウンさんがウィルソンさんのパトカーに近寄り、もみあいになった事実を認定。ブラウンさんに銃を奪われそうになったというウィルソンさんの主張については裏付けが取れなかったとしながらも、「身の危険を感じたというウィルソンさんの主観に対して検察側が反証できるような証拠は存在しない」とした。
検察によれば、ブラウンさんはいったんウィルソンさんから55メートルほど離れた後、振り向いてウィルソンさんの方に向かってきたとされる。ブラウンさんは両手を挙げていたのに撃たれたという証言もある一方で、これと食い違う証言もあり、マスコミに対して語った内容を後に撤回した目撃者もいた。

アフリカ系米国人に対する過剰な警察力行使の一例として、アフリカ系米国人のみが警察犬にかまれていることを挙げ、人種に根差す偏見以外にこれを説明できる理由はないと指摘している。
また、ファーガソン警察の警官は頻繁に不当な家宅捜索を行ったり、市民を不当に拘束したり、召喚状発行の数を競ったりしていたとも語った。
報告書によれば、警察や裁判所は市の財政のためにマイナーな交通違反などを取り締まったり、アフリカ系米国人ばかりを狙って違反切符を切ったり、歩行者の交通ルール無視を取り締まったりしていたとされる。
また、市の職員の間で交わされていた電子メールに人種差別的な内容があったにもかかわらず、職員や警官が処罰された形跡も、誰かがたしなめようとした形跡もなかった。
メールの中にはオバマ大統領をチンパンジーと描写したり、ミシェル夫人を馬鹿にする内容のものもあったという。


出典:『警察の人種差別を認定、白人警官は訴追せず 米司法省』(CNN.co.jp)

これは、日本でも新聞各社が出していましたが、全文を読めるのが産経新聞しかないので

 それによると、黒人人口が67%のファーガソンで、黒人の逮捕者は全体の93%に上った。黒人が交通検問を受けた例は同85%。車両内捜索の対象となった黒人運転手は白人より約2倍多かったが、銃などの武器が発見された例は26%少なかった。警察犬にかみつかれた14件は全て黒人だった。

出典:『米司法省、ファーガソンでの黒人差別の捜査慣行化を認定 オバマ大統領侮辱の公用メールも』(産経新聞)

言いたいことは分かりますが、黒人人口67%で白人は29%です。「車両内捜索は黒人が白人の2倍多かった」、のが2倍なのか3倍なのか分かりませんが、人口比を見ると2倍以上です。大事なのは、武器が発見された例が少なかったというところかなと思います。

警察署長の辞任、警官撃たれる

そんな中で、突然警察署長が辞任を発表し、また騒ぎになりました。辞任を喜ぶデモを警戒していた警察官が二人、銃撃されたため、これもまた大きなニュースになっています。

米ミズーリ州ファーガソンで12日未明、地元警察の署長の辞任表明を歓迎するデモ活動が起き、警官2人が銃撃される事件も発生した。セントルイス郡の警察によると、2人は肩や顔面に発砲を受け、病院に搬送された。...
ファーガソンでは昨年8月、白人警官が武器を持たない黒人少年を射殺する事件が発生し、人種差別に絡む抗議活動が全米に広がるきっかけとなっていた。
出典:『米ファーガソンで警官2人が撃たれる、署長辞任を祝う最中』(CNN.co.jp)

容疑者は逮捕されたが

15日には、20歳の男性容疑者が逮捕されました。が、弁護士によると証言を強要された、警官に暴行されてからだが傷だらけだった、警官を撃つ意図はなかった、そもそもデモなどの活動にも参加していなかった、といっているということです。(参考:『Ferguson: Police deny beating shooting suspect Jeffrey Williams』CNN)

 

戦後の黒人差別事件

アメリカの奴隷制度は、1862年アブラハム・リンカーン大統領の奴隷解放宣言とその後の1865年に提出されたアメリカ合衆国憲法修正13~15条によって廃止されました。前出のウィキペディアによると、1865年中に成立したものの、第二次世界大戦後まで2つの州で批准(=可決)されていませんでした。ケンタッキー州(1976年3月18日批准)・ミシシッピー州(1995年3月16日批准)の2州で、最後は20年前です。

血の日曜日事件

「血の日曜日」から50年、オバマ大統領が演説 アラバマ』(CNN.co.jp)

この演説があったのも3月7日土曜日なので、一連のものが先週から今週にかけて一気に起こったことがわかります。

Little Rock Nine

血の日曜日事件のアラバマ州と、今回のオクラホマ州の真ん中にあるアーカンソー州の話です。公民権法で1957年に黒人が白人と同じ学校に通うことができることが決まり、最初に入学しようとした9人の黒人のことです。州知事が黒人が通うのを拒否して問題になり、世論に動かされた大統領によって最終的に連邦軍が介入して学校へ警備しながら学校に入学した、という事件です。

アーカンソー州は、クリントン元大統領の出身地です。1957年というと日本では、

  • 茨城県東海村の原子力研究所で原子炉が臨界点に達し、「原子の火」がともる
  • サリドマイドが西ドイツで発売される(1961年、生産中止)
  • 名古屋市の地下鉄が開業
  • 長嶋茂雄選手の巨人軍入団決まる
  • 上野動物園内に日本初のモノレールが開業

(ウィキペディア『1957年』より抜粋)

公民権運動

「法的に」人種差別を禁止したのは、1964年の公民権法成立から数年にかけてのことで、選挙権がなかった(選挙権は奴隷解放時に憲法に規定されていたが、実質できないようになっていた様)だけではなく学校やバスやトイレ、レストランなどで白人と違う、黒人専用のものを使っていました。上述リトルロックはこの随分前のことですので、より強い抵抗があったようです。

この公民権運動を主導していたのが、アメリカの祝日の一つになっているキング牧師(記事『キング牧師の日』)です。名前は知らなくても、「I have a dream.... one day,」は聞いたことがあると思います。残念ながら、演説の全篇の映像はEMIおよびthe King Centerの要請で削除されているようですが、編集版はたくさんあります。一つは、ここ「便利帳」にリンクされていました。全文の逐語訳が『マーチン・ルーサー・キングのスピーチ --私には夢がある! 』にありました。

日本人は?

日本人、日系人もアメリカの歴史上のところどころ、特に黒人差別に関しては第二次世界大戦がらみで出てきます。ペタペタと関連ありそうな検索されたURLを貼っておくので、興味のある方はご自分で見て判断してください。いろいろと異論などありますし、信じたいものを信じるしかありません。少なくとも、最近のいろいろな事件のニュースを見るときには上下のいろいろな経緯を少し思い出さないと理解が出来ないのは間違いありません。

  • 鉄条網のなかの「コミュニティ」アメリカ合衆国の戦時強制収容は日系人社会をどう変えたのか
  • 日系人強制収容の不当性を訴えた闘士86歳で逝去
    • http://www.ips-japan.net/index.php/news/human-right/15-2005-04-01-00-00-00
  • 戦争責任とマイノリティ アメリカ黒人の戦争観
    • http://www.asyura2.com/0510/bd42/msg/1020.html
  • Japanese Internment Camp Captured In Stunning Kodachrome Photographs
    • http://www.huffingtonpost.com/2012/08/21/japanese-internment-camps-photos_n_1811070.html
  • 上記の日本語訳を載せたアンテナサイト 劇訳表示。
    • http://www.gekiyaku.com/archives/18411512.html
  • Japan On the Globe(132) 国際派日本人養成講座
    • http://www2s.biglobe.ne.jp/nippon/jogbd_h12/jog132.html
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