日本では、「有名大学→一流企業=高収入」という道筋は今も生き延びているようで、旧帝国大学系や在京私大に行くと年収が高くなる傾向があるようです。

アメリカでは日本よりも大学による収入の違いに注目が集まっています。

日本についての記事はこちら(日本の調査)です。

アメリカの賃金格差

アメリカの賃金格差は、日本と比べて非常に大きいのが特徴です。日本では一般社員と経営陣の所得格差は67倍なのに対して、アメリカでは354倍だと言われています。(参考:Japan May Be Exception to Piketty’s Thesis』Wall Street Journal)

67倍でも十分大きいと言われそうですが、アメリカは一般従業員の間でも所得格差が大きいです。

高卒と大卒以上の違い

日本と同じように、高校卒業後就職した場合は大学卒業よりも生涯賃金が低くなり、大学を卒業した人との差は100万ドル(1億2千万円)に達するようです。

過去には、ハーバード大学を中退したビル・ゲイツや、リベラル・アーツ・カレッジのリード・カレッジを中退したスティーブ・ジョブズのように高卒でも大成功した人たちがいました。今でも、輝ける才能があれば、成功できるかもしれませんが、狙ってできるものではありません。

理系研究室の場合

たとえば、僕が働いている研究室にはテクニシャン(研究補助員)がいますが、

  • 文系大学卒業
  • 理系大学卒業
  • 理系大学博士課程卒業

で、職歴が博士課程卒業の方が長いという違いはあるものの、

  • 文系大卒 2万4千ドル
  • 理系大卒 3万5千ドル
  • 大学院卒 8万ドル

と大きな違いがあります。大学院卒で職歴が長いテクニシャンが一番デキる人のはずですが、実際に一緒に働いているとそんなに違わない気もします。日本だったらここまで大きな差がつくことはないでしょう。

また、ポスドク(博士研究員)の給料も、2万4千ドルから4万3千ドルスタートまでばらつきが大きいです。これがリサーチ・アシスタント・プロフェッサー(日本の大学でいうと特任助教くらい?)になった人は8万ドルに上がっています。

2万ドル台だとスターバックスのフルタイム従業員よりも安いようで、学生ローンを返すので精一杯で、できればきゃりアップを目指す、という状態に陥ってしまいます。日本と違って優秀な移民がたくさん入ってきますし、卒業後により良い条件で働く人が多い大学に入りたい、というニーズは日本よりもかなり強いと思います。

卒業学部による賃金格差

アメリカでは、基本的に理系の方が賃金が高い傾向があり、アメリカの国政調査を基にしたジョージタウン大学の調査で、教師の給料が石油エンジニアリングを専攻した卒業生の3分の1に留まっていたと報告されています。

大学卒業生の平均生涯賃金は、高卒者よりも約100万ドル(約1億2000万円)多い。しかし長期的な所得見通しは、大学で何を専攻したかによって大きく変化する。また一部の専攻科目の中の所得格差は、大卒者と非大卒者との格差よりもはるかに大きいことが分かった。
 例えば、石油エンジニアリングを専攻した大卒者の生涯賃金は平均480万ドル(つまり年間13万6000ドル)で、初等教育学を専攻した教師の140万ドル(年間3万9000ドル)の3倍以上に達しているという。
出典:『大学の専攻で生涯所得に大きな格差―エンジニアは教師の3倍』(ウォールストリートジャーナル)

日本では、理系と文系を分けた調査で、理系の方が高収入という結果が出たり、文系が良いという結果が出たりしていましたが、アメリカでの収入格差は明らかです。

データの詳細を見ていくと、就職したてのころとキャリアの中盤の賃金中央値が最も高いのは化学工学やコンピューター工学を専攻した学生ですが、就職したころには賃金中央値が低かった経済学の学生もキャリア中盤には工学専攻の学生に追いつく傾向が出ています。さらに、中央値では工学部の方が高いのですが、上位10%を見るとキャリア中盤で最も高いのは経済学専攻で、次に金融が続いています。(日本語版のウォールストリートジャーナルにもグラフが添付されています。)

この結果を見ていると、一番大きく成功するのは文系の学生だけれど、多くの卒業生が高い収入を得ることができるのは、理系だったという日本の調査結果に通じるものがあります。日米で共通しているということは、先進国では共通する現象なのかもしれません。

卒業大学による賃金格差

アメリカの大学受験は、日本のように大学ごとに「偏差値」を目安にしているわけではありません。大学入試のための共通試験SATを大学入学までに何度か受け、高い点数を使って大学に願書を出します。SATの点数だけで入学できるわけではなく、日本のAO入試のように家族のバックグラウンドや、エッセイ、これまでの受賞歴やボランティア歴、その他いろいろなものを参考に合格・不合格が決まるようです。特にハーバード大学などのアイビー・リーグ所属有名大学は、人種によって合格者のSAT最低点数がかなり違ったりします。

受験の点数だけではなく、大学が欲しい学生を好きなように入学させるので、日本よりも大学ごとの特色、差が出やすいと思います。(関連記事:『アメリカの大学の学費・奨学金、大学ランキングについて』)

ウォールストリートジャーナルの調査によれば、マサチューセッツ工科大学(MIT)やハーバード大学、ジョージタウン大学といった有名大学の卒業生は所得中央値が8万ドルを超えていました。その中で、リベラル・アーツ・カレッジといわれるカテゴリーの大学(4年制で教養を教える大学)の卒業生は全体的に所得が低いという結果が出てしまっていて、大学の「レベル」を測るためにSATの点数を参考に調整してみても、やはりリベラル・アーツ・カレッジの卒業生の所得が低かったのです。(参考:『Parents’ Fears Confirmed: Liberal Arts Students Earn Less』Wall Street Journal)

リベラル・アーツ・カレッジ

リベラル・アーツ・カレッジは、高い教養を身に着けた知識人を育成するというコンセプトの学校で、全寮制が多く学費も一般の大学に比べて高めです。専門性が高くない学問を大学で専攻すると、平均的には所得が低くなるのではないかと指摘されていました。

リベラル・アーツ・カレッジを卒業した著名人は、例えば元ファーストレディで2016年大統領選挙の候補者、ヒラリー・クリントン氏です。平均は低いとしても大成功した卒業生は凄いというところは、日本の理系・文系の調査結果に似ています。

 

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