特定ブランドのオーガニックのナッツ・バターを食べた人が食中毒を発症しているようです。

今年は、インドネシア工場産のマグロで食中毒が大量発生したり、食中毒を起こした会社のCEOに禁固28年の判決が出たりと食中毒関連のニュースも多くありました。他にも、オーガニックのキュウリから大量の食中毒患者が発生したりもしています。

 ピーナッツ・バター

ナッツ類から作られるペーストの代表的なものはピーナッツ・バターです。ピーナッツ・バターは名前の通り、ピーナッツ(落花生)から作られるものですが、「バター」は形状から呼ばれているだけで乳製品ではありません。

揚げ物油としてピーナッツ・オイルが作られているくらい、ピーナッツは油分が非常に多いので、ピーナッツを炒って擦り潰し、練りこんでいくとバター状になるのです。

が、こうして作られたピーナッツ・バターはそれほど売られていません。なぜかというと、味気ないからです。塩が振られていない落花生と同じ味がするので、パンに塗ってもあまり味がないのです。ここに、いろいろ混ぜたものが良く売られている「ピーナッツ・バター」製品です。

純粋なピーナッツ・バターに味付けをしたタイプのピーナッツ・バターと、そこにショートニングを混ぜてより滑らかにしたピーナッツ・クリームがありますが、ピーナッツ・クリームも「ピーナッツ・バター」とパッケージの見た目では区別があまり付きません。

おそらく、日本で売られている「ピーナッツ・バター」はほとんど全て「ピーナッツ・クリーム」なのではないかと思います。なぜかというと、アメリカで初めてピーナッツ・バターを買ったときに、あまりの塗りにくさに閉口して食べるのを諦めたからです。

ピーナッツ・バターは、もともと固形物のピーナッツをさらに炒って水分を飛ばし、潰したものですから非常に固いです。プラスティックの使い捨てナイフはよく折れてしまいますし、ステンレスのナイフでもなかなか歯がたちません。少し取り分けるだけで疲れてしまいます。とてもパンに塗る気になりません

ウィキペディアを見ると、

パンに塗ったり、和え物の材料にして食べる。中華料理では花生醤として、様々な料理のタレの材料に用いる。アフリカ料理ではマフェ(ソース・アラシッド)などの煮込み料理や、スープの材料として使われる。
出典:『ピーナッツバター』(ウィキペディア 最終更新 2014/10/30 15:22)

と、どちらかというと薄めて調味料として使う用法が多そうです。

ピーナッツ・クリームとトランス脂肪酸

一方のピーナッツ・クリームのほうは、滑らかにするために植物油脂を足してあります。この「植物油脂」が部分硬化油脂が多いようで、「ピーナッツ・バター」にはトランス脂肪酸が多く含まれると書かれている理由だと思います。日本では、ピーナッツ・クリームを「ピーナッツ・バター」と呼んでいますので。

アメリカでは、部分硬化油脂の製造・販売・利用が2018年に禁止されます。心筋梗塞などの動脈硬化性疾患を誘発すると考えられているからです。日本では規制されていませんし、表示義務もないのでトランス脂肪酸の摂取を避けるのはかなり難しいと思います。原料に「植物油脂」と明示してあるものを避けるのが現実的な線だと思います。

ナッツ・バターで食中毒

2015年12月に報道された食中毒は、2015年7月から10月にかけて9つの州で11名が報告されています。

Oregon has reported three cases while California, Colorado, Georgia, Hawaii, Idaho, Illinois, North Carolina and New Jersey are each reporting a single case.
Health officials interviewed eight of the patients and found all of them had consumed nut butter or nut butter spread in the week before illness. Six of them reported eating JEM Raw nut butter spread.
On Wednesday, the Oregon based health food company JEM Raw Chocolate, LLC announced a voluntary recall of its full line of nut butter spreads because of potential contamination.
出典:『11 people sick from salmonella outbreak linked to nut butter』(CNN.com)

「たった11人か」という意見もありそうですが、サルモネラ菌による食中毒は食後12時間から72時間で発症すると考えられています。3日前に食べたアーモンド・バターが原因で今下痢をしていると疑う人がどれだけいるでしょうか?

また、アメリカは日本と違って医療へのアクセスが極端に制限されています。下痢と発熱、という食中毒症状を起こしたとしても普通の人は病院へかからないと思います。周りでも、よく「あの中華レストランで食べた寿司にあたった」とか「あのレストランのサラダにあたった」と聞きますが病院で治療を受けた人は皆無です。

なので、確認が取れている件数は少なくても、実際に発症した人はもっとずっと多いと思います。

発症が確認された11名のうち、9名がJEM Rawのナッツ・バターを食べた後に発症しているので、JEM Rawのナッツ・バターがサルモネラ菌に汚染されていたのは間違いなさそうです。JEM Rawはリコールを始めました。

JEM Raw

JEM Rawというブランドは、患者がもっとも多く出たオレゴン州のメーカーです。JEM Rawのウェブサイトを見ると、製品がなんと4種類しかありません。全てオーガニックのナッツ・バターで、

  • ヘーゼルナッツとカカオなど
  • カシューナッツとアーモンドなど
  • アーモンドとシナモンなど
  • アーモンドとベリー類など

の4つです。サイトを見るとかなりおいしそうです。原料に全て「RAW(生)」と書いてありますし、JEM Chocolateという会社の「RAW」ブランドなので、炒らずに潰して作っていそうです。オーガニックの野菜は堆肥を使っていたりするので材料の段階で食中毒の原因菌に汚染されていることがあります。

普通はナッツ・バターは室温で輸送・販売されています。サルモネラは酸素がなくても増殖しやすい嫌気性菌に属していますので、製造段階で少しでも汚染があれば買った時点で菌が増殖しているかもしれません。開栓後に冷蔵するとしても、食中毒は防げないかもしれません。

リコールのためにAmazonでは販売終了してしまっていますが、ウェブ上に残ったレビューのキャッシュを見ると「初めて使ったときは良かったけれど、冷蔵庫に入れたら固くなってスプレッドできない!」と書かれていました。使うたびに室温に戻していたら、汚染が余計広がりそうです・・・。

かなりお高い(170gで1500円~3500円)ですが、とても美味しそうなので騒ぎが収まったら試しみたいスプレッドです。 JEM RAWは高級品ですし禁固28年の判決を受けたピーナッツ・バター・メーカーの経営者のような、衛生に気を使っていないようなことはないと思われます。生のナッツに加えてベリーも入っていますので、どれだけ気をつけても食中毒の危険はある程度覚悟しないといけないかもしれません・・・・。でも、美味しそうです。

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