2015年11月13日金曜日に発生したフランスのパリ同時多発テロを受け、アメリカではシリア難民の受け入れ拒否を表明する州が多く出ています。

一方、フランスの国連大使が安全保障理事会で「難民受け入れは義務だ」と発言したようです。

シリア紛争

2011年から続くシリア情勢は「シリア騒乱」「シリア紛争」「シリア危機」などの色々な呼ばれ方をしています。2010年に北アフリカのチュニジアで始まった「アラブの春」がアル=アサド大統領によるシリア独裁政権にも波及して2011年1月26日から抗議運動が始まり、3月末から武力衝突が始まりました。

内戦と呼ばれることもあるためシリア国民同士の紛争と思われがちだが、実際にはシリア国外からの勢力も多い。また、当初はアサド政権派のシリア軍と反政権派勢力の民兵との衝突が主たるものであったが、も起こっている。現在は反政権派勢力間での戦闘、混乱に乗じ過激派組織ISISやジハード主義勢力のアル=ヌスラ戦線、またペシュメルガを始めとしたシリア北部のクルド人勢力が参戦している。アル=ヌスラ戦線とシリア北部のクルド人勢力の間でに衝突があり、さらにアサド政権の打倒およびISIS掃討のためにアメリカを始めとした多国籍軍もシリア領内に空爆を行っていて、内戦は泥沼化している。
シリアで内戦が激化している理由として、トルコやアラブ・イスラム世界の中で敵対関係にあるイスラエルなどと国境を接しているという地政学的事情もある。さらに、アサド大統領がシーア派の分派であるアラウィー派であるのに対し、反政府勢力はスンニ派が多く、一種の宗派対立の様相も呈している。
出展:『シリア騒乱』(ウィキペディア 最終更新 2015/11/13 14:11)を改変しています。

CNNに、英語ですが経緯をまとめた記事があります。(参考:Syria's war: Everything you need to know about how we got here』CNN.com)

2015年10月になりロシアが空爆を本格化させましたが、アメリカなどにISISではなく(アメリカが支援する)反政府勢力を空爆している、と非難されたりロシアとアメリカの航空機がシリア領内でニアミスしたりという事態が起こっていました。

米国はロシアの攻撃がアサド大統領に対する反対派を標的にしていると非難している。標的となった反対派には、米国が支援する勢力も一部含まれたという。一方ロシアはISが標的だとしつつ、その他の「テロリスト集団」も攻撃目標だと付け加えた。
アナリストらは、ロシアの空爆がアサド大統領の反対派勢力を一掃する大規模な軍事作戦への幕開けになる可能性があると指摘する。イランや、レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラはすでにシリア軍を支援しており、イラン政府は1日、シリアでの共同軍事作戦を支持すると表明した。
出展:『ロシアのシリア空爆、数カ月続く=下院国際問題委員長』(ウォールストリートジャーナル)
Two Russian and two U.S. aircraft came within visual range of each other -- separated by just 10 to 20 miles -- over Syria Saturday, according to the anti-ISIS coalition.
Both sets of aircraft moved away and there was no incident, said Col. Steve Warren, spokesman for the U.S.-led coalition, Tuesday.
出典:『U.S. and Russian aircraft come within visual range over Syria』(CNN.com)

2015年10月31日にはエジプト上空でロシアの民間航空機が爆弾により墜落し、11月12日にレバノンで40名以上13日にパリで120名以上が死亡するテロが発生しました。いずれもISISが犯行声明を出しています。

シリア難民

2011年から4年に及ぶシリア紛争により、数百万人規模の難民が発生しています。ヨーロッパ諸国やアメリカなどが受け入れを表明しているので、難民のほとんどがヨーロッパへ逃れているような錯覚に陥りますが、最近までは最大の受入国はトルコ、レバノン、ヨルダン、イラク、エジプトといったシリアに隣接した国々でした。(参考:Syrian refugees: Which countries welcome them, which ones don't』CNN.com)

2015年9月にドイツが大量受け入れを容認したため、2015年にドイツ入りする難民が80万人を越える見込みだそうです。(参考:ドイツ、難民受け入れコスト急増 財政均衡実現に黄信号』ロイター)

アメリカの過半がシリア難民受け入れ拒否

10月末からテロが相次いでいることから、アメリカではシリア難民受け入れに慎重な意見が増えています。11月16日時点で全米50州のうち27州までが「受け入れない」と表明しています。アメリカは、2016年にシリア難民を1万人受け入れると表明していたので、もともとヨーロッパ諸国と比べるとかなり少ない数でした。

バラク・オバマ(Barack Obama)大統領は今年9月、来年9月までにシリア難民1万人を受け入れる計画を発表。ホワイトハウス(White House)は、「厳格な」審査手順を踏むことを理由に、計画の実施に伴うリスクの低さを強調していた。
 だがパリ連続襲撃を受け、一部の共和党員からは、内戦が続くシリアから逃れた人々を信仰する宗教に基づいて選別するべきだとの主張も出ており、オバマ大統領はこの提案を「恥ずべき」ものとして批判。内戦下のシリアから逃れようとする人々を助けるため「対策を強化し米国にもできることをする」べきだと訴え、シリア難民受け入れ拒否の動きをけん制した。
出典:『米19州、シリア難民受け入れを拒否 パリ襲撃受け』(AFP BB News)

「受け入れをしない」とした州はCNN.com記事More than half the nation's governors say Syrian refugees not welcome』によると、

  1. アラバマ州 Alabama
  2. アリゾナ州 Arizona
  3. アーカンソー州 Arkansas
  4. フロリダ州 Florida
  5. ジョージア州 Georgia
  6. アイダホ州 Idaho
  7. イリノイ州 Illinois
  8. インディアナ州 Indiana
  9. アイオワ州 Iowa
  10. カンザス州 Kansas
  11. ルイジアナ州 Louisiana
  12. メイン州 Maine
  13. マサチューセッツ州 Massachusetts
  14. ミシガン州 Michigan
  15. ミシシッピ州 Mississippi
  16. ネブラスカ州 Nebraska
  17. ネヴァダ州 Nevada
  18. ニューハンプシャー州 New Hampshire
  19. ニュージャージー州 New Jersey
  20. ニューメキシコ州 New Mexico
  21. ノースカロライナ州 North Carolina
  22. オハイオ州 Ohio
  23. オクラホマ州 Oklahoma
  24. サウスカロライナ州 South Carolina
  25. テネシー州 Tennessee
  26. テキサス州 Texas
  27. ウィスコンシン州 Wisconsin

です。各々の州知事が受け入れ拒否を発表しているのですが、27州のうちバラク・オバマ大統領の民主党出身の州知事は一人だけで、他は共和党の州知事です。大統領選挙の選挙戦が始まっているので、パフォーマンスの部分もあると思います。

例によって、ドナルド・トランプ氏は論争を呼ぶ発言をしています。

一方で、シリア難民を受け入れると「表明」している州は、

  1. コロラド州 Colorado
  2. コネチカット州 Connecticut
  3. デラウェア州 Delaware
  4. ハワイ州 Hawaii
  5. ペンシルベニア州 Pennsylvania
  6. ヴァーモント州 Vermont
  7. ワシントン州 Washington

の7つしかなく、他の16州は何も「表明」していません。

 難民受け入れと州知事

でもそもそも、「州知事に難民受け入れを拒否する権利がない」ようです。

Experts say that while the states may not have the legal authority to block their borders, state agencies have authority to make the process of accepting refugees much more difficult.
出典:『States cannot refuse refugees, but they can make it difficult』(CNN.com)

受け入れ拒否はできないけれど、難民の手続きが進まないようにすることはできるようです。が、ルイジアナ州の知事によると、

Louisiana governor and GOP presidential candidate Bobby Jindal complained bitterly in an open letter to Obama that the federal government had not informed his government about refugees being relocated to his state last week.
"It is irresponsible and severely disconcerting to place individuals, who may have ties to ISIS, in a state without the state's knowledge or involvement," Jindal said in his letter Saturday.
出典:前出CNN.com記事『More than half the nation's governors say Syrian refugees not welcome』

合衆国政府が州に何の連絡もなく難民を移動させたということなので、現実的に拒否できるかと言うと怪しい気がします。

パリの容疑者はヨーロッパ人

シリアにしっかりとした住民登録データベースがないから、危険だから受け入れられないというのは一定の理にかなっているような気がします。が、良く考えるとパリのテロを首謀したのは「シリア在住のベルギー人」とされているのです。

「シリア」のパスポートを持っていた容疑者が居たからといってシリア難民を受け入れ拒否しても、問題はそこではない気がします。危険が減るような気がしなくはないですが、シリアの戦闘員はフランス人も含めたシリア人以外が多かったはずです。

この先、どうなっていくのでしょうか。

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