2015年5月下旬からの韓国MERS禍の記事が、続々と医学生物学系の学術雑誌にトピックスとして出てきています。

MERS:中東呼吸器症候群

MERSについては、記事『中東呼吸器症候群(MERS)』で病気に関する色々なことや予防のための方法などをアメリカCDCのページを読みながら書いています。また『韓国のMERSと日本の対応』で、日本での対応などを書いています。

6月2週目

2015年6月14日の段階では、感染者145名、死者15名、回復者10名(120名が治療中)です。前述記事でも触れていますが、中東での過去のデータでは、

  • 発症から死亡までの日数中央値は12日
  • 死亡率は30~40%

と報告されています。韓国でのケースを考えると、

  • 6月2日時点での感染者25名、死者2名(リンク切れていますがNHKニュース[http://goo.gl/5UjXYT])
  • 6月14日現在の死者15名

死者の人数的には少なくとも普通の肺炎のように3%ということはなく、少なくともSARS致死率(14~15%)と同等はありそうです。

前回のものに比べ詳細かつ完全で、信頼性の高いデータに基づき、WHOは現在SARSの致死率は、年齢群によって0~50%と幅があり、全体では14~15%と推定している。
対象とした地域における死亡の確率は、罹患者の年齢層や基礎疾患など、各症例のプロフィール(背景)によることが示された。WHOがこれまでに受け取ったデータに基づき、SARS致死率は24歳以下では1%未満、25歳~44歳では6%、45歳~64歳では15%、65歳以上では50%以上と推定された。
出典:『SARS致死率、潜伏期間(更新第49報)』(国立感染症研究所ウェブサイトより)

15/25=60%とする計算は、6月2日以降に発症した人の中に含まれる死者数を除いていないのでだめですが、近いうちにWHOの報告に出てきそうですね。SARSや新型インフルエンザのときにもありましたが、初期にわかる死亡率は感染しやすく、死にそうになった人のほうが検査をされるために高く見えます。なので、過去の30~40%までは行かないかもしれませんが、治療薬がない肺炎ということでSARSに近いのかもしれません。

6月4週目

6月28日の発表では、感染者182名、死者32名になりました。感染者の増加がとまってきています。28日には新たな感染確認がゼロでした。

  • 6月14日時点での感染者145名
  • 6月28時点での死者32名

中東での報告と同じく、(韓国でも)SARSより高い致死率になりそうです。韓国では無症候感染者も発見して数に入れています(中東でどうだったのかわかりませんが、今まで読んだニュース記事、報告から推測しています)ので、日本の医療水準でも同程度になってしまうかもしれません。

予防の手洗い・うがいが大切ですね。

 

 

PubMedに出てきた論文

PubMed(世界最大級の論文データベース、アメリカ国立衛生研究所が運営)に関連記事が出てきています。

  • Two mutations were critical for bat-to-human transmission of MERS coronavirus.(J Viol)PMID:26063432
  • South Korea scrambles to contain MERS virus.(BMJ)10.1136/bmj.h3095. PMID:26047970
  • Middle East respiratory syndrome.(Lancet)10.1016/S0140-6736(15)60454-8. PMID:26049252
  • South Korean MERS outbreak spotlights lack of research.(Nature)10.1038/522139a. PMID:26062490
  • Amid panic, a chance to learn about MERS.(Science)10.1126/science.348.6240.1183. PMID:26068815
  • New technologies in predicting, preventing and controlling emerging infectious diseases. PMID:26068569

最後のは直接関係しませんが、興味がわくタイトルなので挙げてみました。New England Journal of MedicineやJAMAには出ていませんが、Nature、Science、Lancet、BMJといった雑誌に出てきています。

PubMedで検索する場合は、タイトルかPMIDをペーストすればたどり着きます。原著論文でないので、アブストラクト(要約)がないものが多いです。カッコ内の雑誌名の後の記号でGoogleなりBingなりで検索すると原本へのリンクが出てきます。

僕の大学(日本のもアメリカのも)では、PubMed検索するときに大学に提供されるクエリをつけることで、大学の契約する論文サービスに飛ばしてくれるので、便利です。タイトルだけみて、ScienceとLancetを読んでみることにしました。

Science

サイエンスの記事によくあるのですが、ぺらぺらで面白くありませんでした。

Lancet

今わかっていることを網羅的に解説しているような気がします。すごく良いのですがグラフなどを載せられないので(契約すればできるので、ここのサイトのアクセスがもっと多ければ考えるのですが、メジャーなサイトで翻訳して解説付きで出してくれるかもしれません。)

(論文ではなくて、オンラインのセミナー扱いでした。)

中を見ていただかないといけませんが、気になったところは

  • SARSよりもMERSで、喀血・血痰が多い
  • 致死率がだいぶ高い?かもしれない(持病のある人の致死率は1.5倍くらいなので、本当はそのくらいなのかも)
  • 猿の実験では、感染から8時間以内(発症ではなく)にインターフェロンと抗ウイルス薬で肺障害を軽減したデータがある(Nat Med 2013; 19: pp. 1313-1317)
  • 人ではわからないか、いくつかの薬剤がMERS-CoVの増殖を抑えるかも
  • 予防には、手袋、ガウン、ゴーグルかフェイスシールド、N95防塵マスク
  • エアロゾルが出るような作業(しぶきが飛ぶような)するときには1時間に6回以上換気
  • 病室は陰圧にしてHEPAフィルタをつける
  • うまくコントロールできればパンデミニックのリスクは低い

などです。予防については「WHOのガイダンスではこう書いてある」という感じなので、そのままですね。

韓国では、エアコンフィルタからウイルスが検出されていますが、エアコン経由で感染が広がった可能性についても調査するというニュースがありました。

 最初の患者の唾液などの分泌物がエアコンに取り込まれ、ほかの病室に広がった可能性があるという。
 ウイルスはドアノブや手すりからも検出され、患者や医師らの移動でも運ばれたとみられる。同省はエアコンを介したウイルスの拡散がどの程度感染に影響したか調べる。病室には換気装置がなく、構造上の問題も詳しく調べる方針。
出典:『エアコンからMERSウイルス 韓国の院内感染』(47news)

換気装置がなかったほうが問題が大きいと思いますので、エアコン(フィルター)経由で感染が起こったかどうかはたぶん追跡してもわからないでしょうね。フィルターを経由して感染するとしたら、頻繁に交換しないといけないので大変ですが・・・

著者の所属が論文中に見つからなかったのですが、2人は

  • Alimuddin Zumla氏:感染症コントロールの専門家
  • Stanley Perlman氏:コロナウイルス(特にSARS)の専門家

のようです。

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