2015年5月末から韓国で広がっている新感染症のMERSについて、ニュースやウェブサイトを拾い読みしています。

MERS自体については、記事『中東呼吸器症候群(MERS)』に書いています。感染症に対する日本の対応を規定している感染症予防法については記事『日本の感染症対策—感染症予防法』にしました。

韓国発症者はまだ増える見込み

WHOが発表している6月3日付けのレポートでは、「初期の患者と接触があった人に発症がまだあると考えているが、過去の例では適切な対策で流行が止まった」ことが書かれています。今のところ普通の感染症の対策をしっかりするようにということでした。

今までの例と同じであれば、対策が本格化してきていそうなので2週間程度で新規発症者が居なくなるかもしれません。シンポジウムにMERSを発症した医師が参加していて1000人以上が隔離対象になったり、隔離対象の人が香港との間を往復した挙句香港で隔離されたり、そういうことはありますが収束してくれると期待できます。

知恵袋に『MERSで日本は騒ぎすぎな気がしないか?』という質問(?)があったのですが、本当に「現地ではそんなにニュースになっていない。」としたら怖いです。遠いアメリカでも結構大きなニュース(少なくとも、ペンタゴンから炭そ菌が輸出されたよりは大きなニュース)になっています。アメリカのニュースでは、韓国でマスクをつけた人がたくさんいる写真が出ていたので、この質問者が間違いだと信じたいです。中央日報の日本語版を見るとMERSの関連記事がたくさんありますから、きっと間違いなのでしょう。

英語ですがこんな記事も出ていました。読んでみたら、本当にどうでも良いことがちょっとだけ書いてあったので読む価値はないかもしれません。マスク姿の人が歩いている写真を残しておきたいので、貼ったままにしておきます。

 

発症者がでた病院名をやっと公表

最初の発症者は4月18日から5月3日にかけて中東を訪問し、最初にMERSを発見したという報告は5月20日です。ちょっと遅すぎやしないかとは思うのですが、6月5日に最初の発症者が出た病院名を公表しました。数日して、他の感染者が出た病院名も公表しました。含まれる病院などを見ると混乱回避を優先したのかもしれませんね。日本語記事で見つけたのは、

5人はソウル市内のサムスンソウル病院で感染。他の3人は、最初の患者が入院し感染者が多数発生した平沢聖母病院(京畿道平沢市)の患者と医療スタッフ
出典:『感染者新たに9人確認 計50人に 医療機関内で』(産経ニュース)

GoogleやBingで地図を調べたのですが、日本語では見つからず、平沢(???;Pyeongtaek) 聖母(??;St Mary)で検索して見ても、どこにあるのか見つけられません。違う言葉を使っている国でモノを調べるのは大変です。ただ、ソウルサムスン病院と平沢聖母病院が京都—大阪間かそれ以上には離れているようだということだけ分かりました。全リストは日本語メディアでは検索方法が悪いのか見つけられませんでしたが、英語サイトではいくつかのサイトで見つかりました。

感染者が出た病院

  1. Samsung Medical Center in Gangnam, Seoul(感染医師が一人出て、1500人以上と接触した病院)
  2. 365 Seoul Open Clinic in Cheonho
  3. Seoul Pyeongtaek St. Mary’s Hospital, in Pyeongtaek, Gyeonggi Province
  4. Asan Seoul Clinic in Asan, South Chungcheong Province
  5. Daecheong Hospital in Daejeon
  6. Konyang University Hospital in Daejeon

感染者が出るかもしれない病院

  1. Asan Medical Center in Songpa, Seoul
  2. Yeouido St. Mary’s Hospital in Seoul
  3. Hanaro Clinic in Seoul
  4. Yoon Chang-ok Internal Medicine Clinic in Pildong, Seoul
  5. Pyeongtaek Pureun Hospital in Pyeongtaek, Gyeonggi Province
  6. Pyeongtaek 365 Yonhapheo Clinic (Clinics Alliance) in Pyeongtaek, Gyeonggi Province
  7. Pyeongtaek Good Morning Hospital in Pyeongtaek, Gyeonggi Province
  8. The Good Samaritan Bagae Hospital in Pyeongtaek, Gyeonggi Province
  9. Pyeongtaek Yeonsei Hub Family Medicine in Pyeongtaek, Gyeonggi Province
  10. St. Vincent Hospital in Suwon, Gyeonggi Province
  11. Hallym University Medical Center in Hawseong, Gyeonggi Province
  12. Medihols Hospital in Bucheon, Gyeonggi Province
  13. Bucheon St. Mary’s Hospital in Bucheon, Gyeonggi Province
  14. St. Mary’s Hospital Family Medicine Clinic in Seongdong-gu, Seoul (保健省にはGunpo clinicと誤って発表された)
  15. Osan Korea Hospital in Osan, Gyeonggi Province
  16. Cheonan Dankook University Hospital in Cheonan, South Chungcheong Province
  17. Choi Sun-yong Internal Medicine Clinic in Sunchang, North Jeolla Province
  18. Daecheon Clinic in Daecheon, South Chungcheong Province

参考ウェブサイト:『Government discloses names of 24 MERS-affected hospitals』(The Korea Observer)

公表が遅くなったことが関係しているのか、隔離者が出た病院が24病院にわたっています。韓国全土とまではいきませんが、南部を除いた多くの地域で出ているように思います。

それにしても、日本のニュースも日本語名だけではなくてハングルを載せろとは言いませんが英語名くらいは載せて欲しいですね。

 

韓国の病院事情

ニューヨークタイムズに韓国の病院事情についても書いた記事が出ていました。ここまでではありませんが日本でも大病院志向は強いので、日本でも行政の対応が一歩遅れると同じ轍を踏む危険があると考えられます。

Patients jostle, cajole and name-drop to get referrals to the biggest hospitals, which they believe attract the best doctors. Family members and outside caregivers commingle with the sick in crowded emergency wards. They often stay with the patients in their rooms and do much of the nursing work — wiping sweat, emptying bedpans, changing sheets and exposing themselves to infections.

So many patients, including those in rural towns, seek medical care at large hospitals that securing a bed in a mega-hospital in Seoul, the capital, for a relative or friend has become a test of a person’s networking ability. Patients often visit small hospitals to get a referral to a bigger hospital.
出典:『MERS Virus’s Path: One Man, Many South Korean Hospitals』(The New York Times)

混雑した救急外来で患者と家族が入院できるまで待っていたり、というあたりは(今でもそうだと思いますが)日本でも同じ気がします。さすがに、大病院のベッドを確保できるのが力の証というようなことは、ごく一部だけでしょう。

この記事を書いた記者はChoe Sang-hunという人で、朝鮮戦争時に米軍が韓国人の避難民を数百人(200—400人)殺戮した事件(No Gun Ri Massacre)の報道でピューリッツァー賞を受賞しています。

 

日本の状況

2015年1月21日付けでMERSが2類感染症に指定されたため、都道府県知事の権限で強制入院をさせることができ、職種によっては就業制限をかけることが出来ます。強制がどれだけ強制的なのかはわかりませんが。

国立感染症研究所ウェブサイトに出ている情報

  • 国内のヒトコブラクダ20頭(全数はおそらく25頭前後)からはウイルスは検出されなかった
  • ヒトコブラクダは1歳時点でのMERSウイルス遺伝子陽性率は35.3%で、2歳では2.9%が陽性
    • 参考文献を見ると2歳のヒトコブラクダでの抗体陽性率は96%以上
  • 2013年8月までにデータによる推計では、
    • 940例(95%信頼区間:290-2200例)の有症状例が存在している可能性があり、少なくとも62%の症例は探知されていないという結果
    • 対策がなされない場合に一人の患者が他の人に感染させる人数R0(基本再生産数)は0.8-1.3と推定
  • 検査試薬(PCR用プライマー・プローブ、陽性対照等)が各地方衛生研究所および政令指定都市の保健所(計72か所)、空港検疫所(16か所)、計88箇所に配布済み

それほど(今のところ)心配はいらなそう

軽い場合の症状が「ただの風邪」というところが鬼門ですが、今のところの情報を総合すると、現時点では過度な心配は要らない気がします。ただ、持病がある人は重症化して死亡する危険が高いのと、家庭内での感染の危険があるので、疑いが少しでもある場合は検査を受けることが必要ですね。

「ただの風邪」に見える場合があるので、町の診療所に疑い例が現れることもあるかもしれません。保健所にいつでも連絡できるように最寄の電話番号をどこかに書いておくと良さそうです。(地方衛生研究所リスト、保健所リスト)

大阪府のウェブサイトでは(麻疹の場合ですが)保健所に連絡して地方衛生研究所に検体を送って検査と書いてあります。(PCR機器の保守業務委託入札を見つけたので)保健所にリアルタイムPCRが置いてあるところもあるようです。

日本で発生時の取り扱い方法

各都道府県に数か所ずつある第2種感染症指定医療機関とし、空気が外に漏れない特別な病室が望ましいが、「病室の空気を外気と十分入れ替えできる個室」でも可能とした。
 また、患者と接触した人には熱や咳(せき)などがあれば入院を求め、症状がなければ1日2回の検温などを2週間求める。さらに、患者と同居する家族やマスクなどをせずに患者を治療した医療従事者には、外出の自粛なども求める。
出典:『国内で発生したら…MERS治療方針を決定<2015年6月10日 2:13>』(日テレニュース)

感染症予防法(参考記事『日本の感染症対策—感染症予防法』)に書いてあることとほぼ同じですが、「家族や患者を治療した医療従事者への外出の自粛」というのが違う点です。これに関しては、韓国でもアメリカでもそうですが、自粛時の手当てなどが何も決まっていない(無理やり有給取得させるのは黒に近いグレー、だからといって国が払うわけでもない)ですのでいざというときに問題になりそうです。

あとは、患者と接触した人に何か症状が出たら感染症予防法でいう「疑似症患者」とみなす(=MERS患者として取り扱う)ということを改めて発表したということですね。MERSとSARS、結核と鳥インフルエンザは、「疑似症患者」が患者として取り扱われることが政令で決まっていましたが、どんな症状を「疑似症」とみなすのかをちゃんと発表したのは良いことだと思います。

 

韓国では初の病院外感染者

6月12日、韓国ソウル市郊外の城南市(ソンナム、Seongnam、???)で家庭内感染が確認されました。家族のMERS感染のために隔離されていた小学生にMERS感染が確認されたようです。

父親が感染し自宅隔離されていたという10歳未満の小学生の女児=京畿道(キョンギド)城南(ソンナム)市=に陽性反応が出た。初の病院外での4次感染となる可能性がある。
出典:『小学女児に陽性反応、初の院外感染か 朴大統領支持率さらに下落』(産経ニュース)

初めてのケースなので怖くないといえば嘘になりますが、「隔離されていた」しかも「家族内」感染なので、コントロールされた状況下ですし予想された範囲内です。MERSの基本再生産数(一人の患者が平均何人に感染させるか)は一人以下と今まで報告されていますが、そういったら、韓国での流行は何なんだという話になるので置いておきますが、いつどこから感染したのか分からない人がこれからでてこなければ収束していくでしょう。

 

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